昨日11月30日ホテルニュータガワで『北九州Liver Symposium』が開催されました。
この会は年1回国家公務員共済組合連合会新小倉病院副院長で肝臓病センター長の野村秀幸先生が主体となって開催されてます。
今回は特別講演1で小倉医療センター肝臓病センター部長佐藤丈顕先生座長のもと、岐阜大学医学部附属病院第一内科講師白木亮先生より「肝硬変の栄養治療」、特別講演2では産業医科大学第3内科教授原田大先生座長のもと、奈良県立医科大学内科学第三講座(消化器・内分泌代謝内科)教授吉治仁志先生より「新ガイドラインをふまえた肝硬変のトータルマネージメント」を拝聴いたしました。
今回は演題として一見地味な感のある内容のような講演と思われますが、今いわゆる“肝炎”、C型に関してはインターフェロンフリーの経口剤の発売以来、治療有効性が非常に高くなっており、またB型に関してもウイルス排除まではまだですが、活動性を抑えるウイルスコントロールまでは可能となってきてます。
が、それでも若干治療コントロール不良の方もおられますし、我が国の特徴でもあるウイルス肝炎患者の多くが65歳以上の高齢者ということ、また近年NBNCであるNASHのような脂肪肝ベースの肝炎からの発癌も診られてきてます。
これらの関係には肝線維化ということが非常に問題となり、また肝硬変は肝臓の病態の終末期といわれ、低栄養状態の典型症例で、一般に“肝硬変”=PEM(Protein energy malnutriton:たんぱく質・エネルギー欠乏(症))といわれてます。
したがって栄養管理が肝硬変の予後を決めるといっても過言ではありません。
今回は講演1では肝硬変状態ではBCAA(バリン・ロイシン・イソロイシン)という分岐鎖アミノ酸、BCAAは筋肉で代謝されてアンモニアを解毒すると同時に肝臓のエネルギー源になりやすいアミノ酸で、肝硬変の患者さんはこのBCAAとAAA(フェニルアラニン・チロシン)の比率(フィッシャー比)が低下、つまりBCAAが減少しAAAが増加したアミノ酸インバランスがみられます。
したがってBCAAを多く摂取しAAAを減らすことでアミノ酸バランスを整え、肝臓のエネルギー不足を補うことが肝硬変の予後を改善の栄養療法でもあり、講演2では肝硬変患者さんでは低アルブミンからの腹水、腹水の機序はいくつかあるのですが、今回この腹水に着目しての腹水の新しい治療薬中心としての栄養管理。
特にこの新薬である利尿剤、従来の利尿剤は水がナトリウムと一緒に動き電解質への異常きたしたり、腎障害への影響など、またアルブミンへも影響がということでしたが、今回の新薬ではナトリウムはそのままで水だけの移動、またアルブミンへの影響もないということで、非常に有効性の高いもので、比較的早期に使用することで腹水のコントロールに有効性が高いということで肝硬変患者さんのQOL上げることでの栄養管理。
要は、肝硬変患者さんの肝線維化を如何に予防改善さしめるか、飢餓状態にある肝硬変患者さんの栄養管理をどう行うか、また以前より就寝前の約200kcl程度の軽食(LES:Late Eating Snack)も肝硬変患者さんには有効で、このときに肝性脳症きたしやすい患者さんにはアミノレバンENがちょうど200kcalでBCAAであるため有効性が高いといわれてますので、そういった指導も患者さんへは有用と思われます。
今回改めての肝硬変患者さんへの栄養管理、非常に勉強になりありがとうございました。