今回は第39回の『一糖会』です。
この会は産業医科大学の第一内科学講座が主催されてる、医師のみならず看護師や管理栄養士などコメディカルにも門戸を開いてる会です。
今回の演者は順天堂大学の綿田裕孝教授の「インクレチン関連製剤の心血管作用」という演題でのご講演でした。
順天堂大学は糖尿病では全国の中心的牽引者である河盛教授の教室があり、河盛先生のもとで研究を数多くやられての自験例含めた講演でしたが、多少コメディカルに今回は難しい内容であったのではと思いました。
で、近年このインクレチン製剤が従来の糖尿病治療薬とは大きく異なる機序から血糖降下作用をもたらすDPP-4(dipeotidyl peptidase-4)阻害薬(経口薬)、GLP-1(glucagon-like peptide-1)受容体作動薬(注射薬)があり、これら新しい薬は今までにも何度かブログ掲載はしてきたのですが、今回はインクレチンの心血管作用ということで、あらためてインクレチンとは。
人間本来食事をすると小腸に存在している細胞の一部が刺激されて消化管ホルモンが分泌され、その消化管ホルモンの中には、すい臓のβ細胞を刺激してインスリンの分泌を増加させる働きをもつものがいくつか存在しており、これらのホルモンを総称して「インクレチン」と呼ばれてます。
インクレチンにはGLP-1とGIPというホルモンがあり、それぞれの働きでβ細胞に作用します。近年登場したインクレチン製剤は、このインクレチンのなかでもGLP-1の体内での機序に着目してつくられた糖尿病薬です。
GLP-1は、食事による刺激によって小腸から分泌されるとβ細胞にあるGLP-1受容体に結合して、インスリン分泌を増加させる働きをします。この働きは、血液中のブドウ糖量に依存しているので、血中ブドウ糖濃度が80mg/dL以下では起こりません。(低血糖が少ない要因)
また、肝臓でのグルカゴンの分泌・胃酸の分泌・食欲中枢を抑えるなど、さまざまな生理作用をもっています。
また、DPP-4阻害薬は、GLP-1を分解するDPP-4の働きを妨げることでGLP-1が分解されるのを防いでGLP-1の血中濃度を高めます。これによりインスリン分泌が増強され血糖値が下がります。
GLP-1は血液中の血糖の濃度に依存します。そのため血糖依存的に、すなわち血糖値の上昇に伴ってインスリン分泌が増加するため、単独投与では低血糖になりにくいとされています。また、1日1~2回の投与で、そして食事の影響がないので食前・食後のどちらの投与でもよいことや、血糖コントロールの改善に伴う体重の増加のリスクが低いことなどが利点として挙げられています。
そこで今回の心血管への影響も、例えば急性心筋梗塞発症後再灌流に成功した患者に対する72時間にわたるGLP-1投与による心機能の有意な改善や、2型糖尿病患者におけるGLP-1の血流依存性血管拡張反応(FMD)の上昇、上述のシタグリプチンにおけるSDF-1αとEPCの増加など、特に心臓の洞結節にインクレチンが集中してるということで、心血管への前述の影響もあるらしく、インクレチンの今までの血糖低下作用はもちろん、体重減少や脂質系の改善作用、血管炎の炎症抑制など、生体には非常に有用な薬剤と思われます。
こういった薬剤を、他の従来薬との併用含め更なる患者さんへの有益な糖尿病治療の提供が求められると思われます。
今後も患者さんの糖尿病治療の質を考え、医療提供したいと思います。