- 2016.11.25
- 〜・〜北九州肝臓病研究会〜・〜
11月22日火曜日リーガロイヤルホテル小倉で『北九州肝臓病研究会』が開催されました。
今回は一般演題に小倉医療センター肝臓病センター部長の佐藤丈顕先生座長のもと、産業医大消化器内科肝胆膵内科の大江晋司先生から「ウイルソン病における肝細胞障害機序」を、また北九州市立医療センター内科部長重松宏尚先生より「肝細胞癌治療後の異所性再発に及ぼすインスリン抵抗性の影響」の演題。
産業医大大江先生は教室の主任教授である原田大教授が“ウイルソン病”の大家の先生で、今回の講演で新たな知見となりました。
市立医療センターの重松先生の演題では、肥満や糖尿病、HCV+Fatty患者さんなど、いわゆる“インスリン抵抗性”のある患者さんの肝細胞癌の発生リスクはといった切り口でのご講演でした。
結果、慢性肝炎患者さんでも、肥満者は肝硬変患者さんのガン発生リスクと変わらないといった結果で、如何に慢性肝炎といえど、肥満などまたそれに伴う糖尿病患者さんなどは肝硬変患者さんと同じく厳重な管理を要すというご講演で、我々実地医家でも患者さんへの体重の指摘なども行わなければと感じた次第です。
一般演題のあと特別講演で、今回は新小倉病院副院長で肝臓病センター長でもある野村秀幸先生の「DAA製剤の選択」というご講演を、産業医科大学第3内科学教授である原田大先生座長のもと行われました。
今回はC型慢性肝炎の1992年よりインターフェロン治療が始まった治療変遷のお話から、現在の最新治療であるインターフェロンフリーでの経口剤—直接作用型抗ウイルス製剤(DAA製剤)、なかでも特に直近で出てきた3剤を中心にわかりやすくご講演いただきました。
私も以前より投稿してあるとおり、現在ではC型慢性肝炎Ⅰ型(日本人の殆どがⅠb型)に関してほぼ100%近くの有効率があり、かなりの治療奏効率はあるのですが、若干名治療抵抗性がある患者さんもいるのも事実で、こういった患者さんを今後どういった治療検討を要すかが問題といわれてます。
また、治療奏功した患者さんでも、我が国の特徴として65歳以上の高齢者が多いということを鑑みて、ただでさえ高齢者の発がんリスクが高いという状況の中、如何に早期に発癌を予想するか、またどんな患者さんを厳重な管理を要すかといった中で、いろいろなマーカーもあるかと思われますが、今回野村先生は、栄養評価の基準である“アルブミン”と、ここ最近保険適応となった「Mac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体=M2BPGi」という線維化マーカーを指標に、補足で年齢に血小板等々加え検討しており、やはりアルブミン<3.5g/dl、M2BPGi>2.0で、且つ年齢>65歳、血小板<16万では、DAA製剤でC型慢性肝炎が治った後も厳重管理様子ということでした。
以上のことは、重松先生の“インスリン抵抗性”のある患者さんなども含め、C型慢性肝炎治療でインターフェロンフリーとなった現在、治療に関し非常に敷居が低くなり、多くの先生方も治療可能となった昨今、治療後の患者さんの永続的管理に非常に勉強になったのではと感じた次第です。
ご講演された先生方、ありがとうございました。